今月の本: |
『日の名残り』(カズオ・イシグロ) |
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実施日時: |
2016年5月21日(土)14:00〜17:00 |
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今月の会場: |
サンライフ練馬 第二和室
西武池袋線中村橋駅 徒歩5分 |
参加費 : |
250円(会場費・資料コピー代に補填します) |
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懇親会 : |
終了後希望者で懇親会を行います(会費2500円程度) |
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この作品はイギリス在住の作家カズオ・イシグロ氏の代表作の一つです。
物語の舞台は1956年7月のイギリス。
由緒あるダーリントン・ホールの執事を務めるスティーブンスは1920年代から長く同ホールで働いてきた。ホールは名称に冠されているダーリントン卿の所有だったが、第2次世界大戦後にアメリカ人の富豪ファラディ氏に渡っていた。
昔からのスタッフのほとんどはホールを去り、人手不足の中で自分が思い描く仕事ができないスティーブンスの元に、かつて女中頭として信頼を寄せていたミセス・ベン(ミス・ケントン)から手紙が届く。昔を懐かしむ言葉と共に家庭の不和を感じたスティーブンスは、ミス・ケントンにホールに戻ってきてほしいと考えるようになり、ファラディ氏から休暇の勧めもありミス・ケントンを訪ねる旅に出発する。
スティーブンスが主人と定めて仕えてきたダーリントン卿は、第1次世界大戦後の1920〜30年代に行われてきたドイツに対する経済政策等を行き過ぎた制裁だとして、ヨーロッパ諸国の融和政策を推進しようと非公式外交に尽力してきた。
しかしその行動はナチスドイツの傀儡と化しているとの批判もなされてきた。
第2次世界大戦後は要職に就くこともなく戦犯のような人生を送る。
執事という職業に生き抜いてきたスティーブンスにとって、生涯の主人と定めたダーリントン卿の没落は、自らの人生のピークが過ぎたも同然であった。
物語は、スティーブンスが過ごした7日間の旅行と共に語られていく。
執事として自身の全能力を思う存分に発揮していた時代の思い出。
同時代を生きた名執事の生き方を通して述べられる「執事とは何か」との思い。
共に働いたミス・ケントンとのエピソードの数々。
旅先で出会った人々との会話。
そうした一つひとつを積み重ねながら、スティーブンスの心の中で、これからどのように生きていくのかという問いかけへの答えがゆっくりと見えていく...。
旅先で出会った60代後半の初老の男がこう語る。
「夕方が一日でいちばんいい時間なんだ」
時代の変遷の中で、人はどのように生きていくのだろうか。
自身の人生と重ね合わせながら、皆さんと一緒に読み進めてみたいと思います。
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