今月の本: |
『人類の議会』(ポール・ケネディ) |
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実施日時: |
2009年9月26日(土)14:00〜17:00 |
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今月の会場: |
西武池袋線大泉学園駅・徒歩3分
勤労福祉会館 和室(小)
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『人類の議会』は2007年に秋に発刊された歴史学者ポール・ケネディの大著である。
ポール・ケネディ氏は20世紀を代表する国際関係論の世界的権威者であり、1995年にはガリ国連事務総長(当時)の要請で、国連の一機関として設置された「国連の未来」研究作業部会の共同議長も務めている。
国連に関する著作は世間に多く出版されているが、本書はその普遍性と客観性において特筆に価する一書ではないかと思われる。
本書の狙いと構成は、ポール・ケネディ自身が述べているように一文で言い表すのは難しい。
そのうえでポール・ケネディは次のように述べている。
「国連がいかに機能してきたか、新たな活動に従事すべくどのように変化してきたか、そしてとくに、その新たな活動が、いかにして国連が担うにふさわしい役割と見なされるようになったかに、焦点をあてている」「進化と変容と実験の研究、失敗と成功の研究なのである」
「国連機関を通して相互の尊厳と繁栄と寛容の未来を築くという共通の目的のために、人類が集まり模索してきた活動の物語であり、数々の挫折と失望の物語でもある」
いま世界は100年に一度とも言われる世界経済恐慌に襲われている。その原因は新自由経済主義にあるとも言われ、直接の引き金は金融商品の蔓延とサブプラムローンの破綻であると言われている。
しかしそれは真の原因と言えるだろうか。
経済活動は人類の生存活動の一部であるが、一部でしかないともいえる。しかしその底には、より大きな本質的テーマが横たわっている。
それは、個々人の利益の追求が世界を危機の淵に追い込んでいるという事実であり、その危機をどうすれば克服することができるかという問題である。
「人類の議会」を提唱したイギリスの詩人アルフレッド・テニスンの問題意識も全く同じだったのではないか。国際連合(国連)創設に奔走したハリー・トルーマンの思いもまた同様であったに違いない。
ポール・ケネディはその思いを次のようにつづっている。
「人類共通の善と長期的利益のために、自らの不安や利己主義を克服できるかどうかである」
そして
「二十一世紀の歴史の大半は、その課題にわれわれ全員がどう対処するかにかかっている」と。
眼前の危機を乗り越えながらも、今一度、問題の本質に迫る努力を私たちは開始しなければならない。
広範囲にわたる問題群に対して、ややもすれば個々人の努力は無力であるように感じてしまう。身近であるはずの政治や行政ですら、何か大きな力の流れで動いていて、一人の人間の意見では何も変わらないように感じる今日この頃である。
ましてや、世界の平和だとか人類の幸福などと言うと、個々人が想像をすることすら無意味であるように感じるのは致し方ないのかもしれない。
しかし、である。
突き詰めて思索を重ねるならば、一人の人間における地道な意識変革と具体的行動のみが世界を変えるという、絶対的法則に行き着くのではないかと思えてくる。
本書は、そんな思いに満ちた一書である。
決して過激に熱く語る本ではなく、かといって、必要以上に否定的な批判本でもない。
ここに書かれているのは、「人類の議会」が必要だと感じた人々の行動してきた歴史であり、その具体的な方策の成功と失敗の記述である。
そして、二十一世紀の現在を生きる私たちが何をすべきなのかを考えるための一書であると、私は思う。
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http://prosecute.way-nifty.com/blog/2009/09/54-2c80.html |
【当日配布の資料より一部を掲載】 |
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《 論点の整理 》
本年2009年の第64回年次総会は9月15日(火)〜30日(水)の日程で開催中。
国連平和デー:毎年9月21日
第一章 新世界秩序に向けての困難な歩み 1815年−1945年
■1815年からの取り組み
第一次世界大戦の反省から生まれた国際連盟とその破綻
1943年以降の連合国間の思惑
?単なる自然な利己主義
?列強による過去数年の歴史解釈の結果
?近い将来に対する懸念 → 国連憲章作成時の安全保障に大きく影響
■二大超大国【アメリカとソ連】をいかに国際的な責任を分担する体制に参加させるか?
?ソ連、アメリカ が国際憲章によって自国の将来の行動が制限されることを懸念。 【拒否権の重要性】
?世界秩序を模索していた政策立案者が過去10〜15年間で国際秩序の崩壊を経験。
【新しい安全保障体制は牙を持たなければならない】
?国力の大小に関わらず対等な発言権、決定権を有した国際連盟の反省。
再び侵略行為に出る可能性があれば早急に対応しなければならない。
【小国は安全保障の消費者であり、大国は安全保障の提供者である】
■1945年当時の事実
?どの大国も新たな安全保障体制の構築を支援し加わる意思を持っていた。
?(その後制定される)国連憲章は安全保障理事国の独自行動を制止できない流れになっていた。
■第一次世界大戦から得たもうひとつの教訓
自由主義体制の経済的、社会的崩壊によって、政治不安と過激主義が生まれ、
絶望した人間が二度の大戦を引き起こした。
→ 大規模な社会経済再建を模索【ブレトンウッズ機関の誕生】
※ 国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD:世界銀行)
■三脚の椅子
?国際安全保障の確保−協調的外交と紛争解決の仲裁を強調し、集団的軍事力で侵略を阻止する。
?世界経済再建のための手段を考案する。
?諸国民間の政治的、文化的理解の向上−戦争は人の心の中で始まる。
(中略)
第八章 二一世紀の約束と危険
■国連改革の提案 その条件
?われわれ人類の状況の改善を目に見える形で実行できるかどうか
?国連で議決権を持つ国家政府の同意を得られるかどうか
■国連改革が緊急を要する変化【1945年の国連憲章への挑戦】
?権力政治構図の変化−経済バランス、勢力バランスにふさわしい機構へ。
→ 今日の占有特権はますます時代錯誤に陥り、批判が高まる。
?人類の生き残りに関わる世界的圧力
・地球温暖化
・アジアなどの途上国の工業化
?テロの脅威
?国際社会は崩壊した国家にどう対処するか
■国連改革という言葉のもつ3つのレベル
?「厩舎の大掃除」のアプローチ
?国連の規約の大幅な変更を伴う改革
?二つの中間的立場
■国連改革の深さ
?現状維持
?安保理の規模を現在15ケ国から23、25ケ国に拡大
?2005年ハイレベル諮問委員会による包括案に代表される中道的立場
■安保理で永久に理事国を務める特権
?栄誉
?拒否権
■国連の安全保障体制の効率化
・差し迫った脅威に対する情報活動の改善促進
・危機対策のより効果的な調整
・崩壊国家に対する復興には、一定の雛形は通用しない。
※大惨事や大量殺人が急に起きているとき、迅速かつ果断に行動するために、
国連にどのような物理的(軍事)資源を与えるか?
■真の問題
安保理が平和維持・平和執行活動を嫌がらなくなっているように思われる一方で、
加盟国への軍事力派遣の依頼は事務総長に任せている現実。
■加盟国の実態
?軍事貢献ができない国
?支援を渋る国
?貢献したいが援助疲れであえいでいる国 ※カナダの取り組み
■国連常備軍創設の妨げのもうひとつの妨げ
アメリカの一部の政治家の妄想
→ 事態を監視するための専門的軍事機関が必要であるのは明らか。
■国連参謀委員会の復活案への障害
?従来からの主要貢献国は、自国部隊が大国が支配する軍事参謀の指揮下に入ることに不安を覚える。
?安保理常任理事国が自国の国益を重視して事態に影響を及ぼす懸念がG77に広がる。
?先進国は、軍事力が強大なアメリカ軍の指揮下に入り妥協を余儀なくされるかもしれないと危惧する。
↓
☆軍事参謀委員会の復活を拒み、国連常備軍の創設を妨げるならば、どのようにして
現在及び将来の緊急事態を処理するのか。加盟国は国連憲章第一条を実現するのか?
■現在行われている平和維持活動の形態
?「青いヘルメット」活動
?地域的平和維持活動
?地域の防衛機構への委託
?個々の加盟国による活動
→ 平和維持及び平和執行活動には一定の方式はない。ここの状況に応じて検討せよ。
■個々に対応することの問題
・標準的な資源の確保、多国籍軍の訓練が困難になる。
・今でさえ負担過剰な事務総長室と安保理の仕事がさらに増える。
・首尾一貫性に欠け、二重基準が用いられる可能性が高まる。
・拒否権を持つ大国に国連にどの程度の行動を望むのかの決定権が委ねられる。
→ 望ましい結果といえないが、何もなされないよりは「まし」である。
■移行期、復興期の動向に、はるかに大きな注意を向けなければならない。
→ 統治信託理事会に新たな役割を担わせたらどうか。
■平和維持・平和執行活動のクロージング
国連の「ハードな権限」を持つ機構から、再建と長期的援助にあたる「民間団体」へ移行。
?国連の全機関が、崩壊国家の主権回復と生活の質の向上という大目的のために、
現地の事務所と協力する。安保理が事務総長に指名して指示する。
?総会が関与する。
■社会経済分野において、国連機関にしかできないことは何か?
※ 問題を指摘するのは容易だが、解決策を提案するのは何倍も困難だ。
→ それでも、こうした分野での国連の役割を切り捨てるのは、
知的敗北主義と政治的現実逃避に他ならない。
■経済社会問題を取り扱う専門機関は、いかに国連と連携関係を持つべきか。
■2025年までに新しい主要経済国の課題は、現在と全く違ったものになる。
■社会経済分野での最大の弱点:経済社会理事会の力のなさ。
→ 部分ではなく、「全体」にある。
■各改善案は単独ではなく、包括案として国連諸機関を前進させる助けとなる。
■国連の組織改革に大きく影響されない分野
・人権
・他者の文化への理解促進
・環境保護
・国際的市民社会の前進
■「総会」について
いかにして総会を対応力に優れた、効率のよい、そして疑念を抱く者、批判的な者から
単なるおしゃべりの場とみなされないものにするか?
■国連の資金調達の問題
☆我々は何をなすべきか?
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数々の予想外の展開や後退、恐ろしい統治の失敗、おぞましい人権侵害、
憲章の目的を尊重せず独自の道を貫こうとする政権と遭遇することも、
覚悟しておかねばならない。
我々はそんなことに最善の対応を妨げられることなく、
「戦争の惨害から将来の世代を救う」という
この常に成否相半ばする試みの歴史をよりよくし、
「基本的人権に関する信念をあらためて確認」し、
「いっそう大きな自由のなかで社会的進歩と生活水準の向上とを」促進するために、
知恵を絞らねばならない。
この国連憲章の前文は、まさしく正鵠を得ている。
問題は、われわれにそれができるかどうかである。
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