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今月の本は夏目漱石の『吾輩は猫である』。桂冠塾としては夏目作品は『こころ』に続いて2作品目です。
前回の折に辛口の論評と受け取られたのか、再びの夏目漱石に意外感があるようです(^^ゞ
『坊ちゃん』と並ぶ夏目作品前期の代表作。漱石自身の体験が色濃く反映されているのも夏目作品の特徴といえるでしょう。
「吾輩は猫である。名前はまだない。」との冒頭のフレーズは有名。読書好きの小中学生が読了する本のひとつでもありますが、全編を読んでいない...という人も多いのではないかと思います。
作品は、教師をしている人物の家に住み着いた「猫」が主人公。この猫の独白として日々の出来事が語られていくというスタイルです。
構成は11章。
初回(第1章)は高浜虚子が主宰した俳句の同人誌『ホトトギス』の1905(明治38)年1月号に掲載。当初は1回のみの読切り作品として書かれたが読者に好評を博したため、掲載に変更して1906(明治39)年8月号まで計11回まで連載したという経緯がある。
第1回目は漱石の了承を得た高浜虚子が筆を加えているため少し筆感が違うという指摘があるが、そこは漱石のこと、うまく第2章以降を継ぎ足している。この作品の成功によって、漱石の名前は一躍有名となり、その後の作家人生を歩み始めることになった。掲載雑誌『ホトトギス』もこの作品のおかげで多く発行部数を伸ばしたという。
全体としてのモチーフがあるのかないのか...。
このあたりも当日多いに語り合ってみたいと思いますが、「猫」の視点から当時の社会状況や人間の習性をコミカルに風刺する筆力は漱石ならでは。その後の日本文学に大きな影響を与えたという指摘にも納得がいきます。
また、夏目漱石という作家はどのような生き方をおくった人物なのでしょうか。小説家を目指す若き青年に贈った漱石の言葉が残っています。
「君なども死ぬまで進歩する積りでやればいいではないか。作に対したら一生懸命に自分の有らん限りの力をつくしてやればいいではないか」
様々な執筆環境で自身の才能をすり減らした印象すらある夏目漱石。
彼の登竜期の作品を共々に読み込んでみたいと思います。
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